小規模な会社に対しては、数々の税金上の優遇措置が設けられています。
何をもって小規模な会社とするのか?
それは、「資本金の額」と「従業員数」により判定されることとなります。
では、「資本金額」や「従業員数」が少ないと、どんな税金上のメリットがあるのかみていきたいと思います。
法人税の優遇措置
「資本金額」や「従業員数」が少ないことによる法人税法上のメリットには、次のようなものがあります。
税率
「資本金1億円以下」の法人については、以下のように税率が低く設定されています。
- 所得が年800万円以下の部分・・・19%
- 所得が年800万円超の部分・・・23.4%
ちなみに、資本金が1億円を超えるの法人の税率は、所得の金額にかかわらず、一律23.4%となります。
【参考資料】
法人の区分 | 2016.4.1以後開始事業年度 | 2018.4.1以後開始事業年度 |
資本金1億円以下の法人 |
年800万円以下の部分・・・19%(15%)
年800万円超の部分・・・23.4%
|
年800万円以下の部分・・・19%
年800万円超の部分・・・23.2%
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資本金1億円超の法人 | 23.4% | 23.2% |
30万円未満の減価償却資産
30万円未満のモノであれば、減価償却で数年に渡って経費にすることなく、全額経費として計上することができます。
ただし、その事業年度において使用を開始しなければなりません。
「事業のために使用し始めた日」時点において「資本金1億円以下、従業員数1,000名以下」の法人が対象となります。
欠損金の繰戻還付
この制度は、
- 今期は赤字
- 前期は黒字で法人税を支払った
ような場合に、前期に支払った法人税をかえしてもらうことができる制度です。
「資本金1億円以下」の法人が対象となります。
特別償却と特別控除
新品の機械装置などを購入し、事業のために使用し始めた場合には、特別償却又は特別控除の適用を受けることができます。
「事業のために使用し始めた日」時点の資本金が1億円以下(特別控除の場合は3,000万円以下)の法人が対象となります。
1つの資産について特別償却と特別控除を重複して適用することはできません。
特別償却(対象:資本金1億円以下の法人)
特別償却とは、通常の減価償却費のほかに、購入した価格の30%相当額を追加で費用計上できる制度です。
購入し、使用し始めた事業年度において、多く費用を計上することができます。
特別控除(対象:資本金3,000万円以下の法人)
特別控除とは、購入した価格の7%相当額を直接法人税額から控除できる制度です。
ただし、控除を受けることができる金額は、その事業年度の法人税額の20%相当額までとなります。
控除額が法人税額の20%を超えるような場合には、1年間に限り繰り越すことができます。
こちらの特別控除は、「資本金3,000万円以下」の法人が対象となります。
特別償却は課税を翌事業年度以降に繰り延べているだけなのに対し、特別控除は法人税自体を減らす効果があります。
交際費
「資本金1億円以下」の法人については、800万円まで交際費の損金算入が認められています。
資本金1億円超の法人については、交際費の50%までしか損金算入は認められていません。
欠損金の繰越控除
青色申告の特典として、欠損金について9年間の繰越控除が認められています。(2018年4月1日以後に開始する事業年度については、繰越期間は10年間となります。)
ここでも、資本金の大小により繰り越せる金額が変わってきます。
「資本金1億円以下」の法人については、その全額を繰り越すことができますが、資本金1億円超の法人については繰り越せる金額に制限があります。
事業税の優遇措置
資本金1億円超の法人の場合、外形標準課税などの適用があります。
法人住民税の優遇措置
均等割の金額
「資本金額」と「従業員数」により、赤字でも支払わなければならない均等割(きんとうわり)の金額が変わってきます。
最低税額のカテゴリーは、「資本金1千万円以下、従業員50名以下」の場合で、その金額は「70,000円」となります。(東京都の場合。市区町村によって金額は変わってきます。)
税率
資本金1億円超の法人については、法人税割という部分の税率が高くなります。
消費税の優遇措置
法人の設立1期目と2期目については、消費税は原則免税となります。
しかし、設立1期目・2期目においても、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上の法人については、消費税の納税義務は免除されません。
資本金1,000万円で法人を設立した場合であっても、1期目の途中において資本金を1,000万円未満に減額した場合は、2期目の開始時点の資本金が1,000万円未満となるため、2期目においては免税事業者となります。
(ただし、その場合でも、前事業年度の上半期の売上が1,000万円を超え、かつ、前事業年度の上半期の給与の支払額が1,000万円を超える場合は、課税事業者となります。)
余談ですが、初年度から多額の設備投資をおこなった等に、課税事業者になって仕入れにかかった消費税を取り戻したいときは、税務署に届出をすることによって、資本金が1,000万円未満であっても、課税事業者となることができます。
最後に
節税という観点からのみ見れば、消費税が免税となるため、設立時の資本金の額は1,000万円未満とすべきでしょう。
また、いつの時点の資本金の額により判定するか、という点にも気を付けたいところです。
例えば、「30万円未満の資産」や「特別償却・特別控除」であれば、「事業のために使用し始めた日」時点の資本金の額で判定しますし、消費税であれば、「事業年度開始の日」時点の資本金の額で判定することとなります。その他については、「期末日」時点での資本金の額で判定します。